春香Pの雑記

アイマスのこと、書評、日記など。

小765主義と大765主義-小765主義者の視点から−

人それぞれの楽しみ方があると思うので、こういう視点もあるんだな、という程度に読んでください。

 

アイドルマスターの世界観には事務所がある。

その事務所の1つに、765プロダクションがある。そして、この765プロダクションは、さらに大きく2つに分けられると言えよう。

それは、所属アイドル13人の765プロと、13+39人の765プロ(ミリオンの世界)である。

現在、13人の765プロの潮流がどんどん先細っていく一方で、52人の765プロという意識はかなりの広がりを持っていると言えるだろう。

そこで、この状況をとある歴史上の動きにヒントを得ながら考えてみたい。ドイツ統一における2つの動き、小ドイツ主義と大ドイツ主義である。この試みはかなりの無理もあり、当然のことながら一致しないところが多いが、共通点もあり、そこから何か学びがあるように思う。特に、13人の765プロを愛するものにとっては。

 

簡単に小ドイツ主義と大ドイツ主義について説明したい。19世紀半ば、ヨーロッパにナショナリズムの波が押し寄せる中、当時バラバラに分裂していたドイツ地域でも統一の動きが見られた。

このうち、プロイセンと呼ばれるエリアだけでまとまってドイツを構成しようとした動きが小ドイツ主義、プロイセンオーストリアオーストリアは人種的にドイツ人が多い)を併せて全ドイツ人によるドイツを作り上げようとした動きが大ドイツ主義と呼ばれる。

ここからは歴史の話なので、興味のない方は読み飛ばしてくれて構わない。

当時、オーストリアは国内に多様な民族を抱えていた。そのため、ドイツ人種による統一、大ドイツ主義を認めてしまうと、非ドイツ人との分断を招きかねないと考えた。その結果、オーストリアは大ドイツ主義を拒絶、小ドイツ主義が統一の主導権を握る。こうした中、小ドイツ主義者は、プロイセンの王フリードリヒ・ヴィルヘルム四世を皇帝にまつりあげることで、ドイツの統一を図った。しかし、近代的なナショナリズムや議会での決定を嫌ったプロイセン王はこれを拒否、小ドイツ主義者による統一も挫折に陥る。

その後、プロイセンの宰相ビスマルクによって、プロイセン主導でのドイツ統一がなされ、結果として小ドイツ主義での統一がなされた。しかし、ビスマルクの真の狙いはドイツ統一ではなくプロイセンの覇権の確立であり、小ドイツ主義での統一が達成されたことはは結果論的な面が大きい(この点、『ビスマルク』飯田洋介に詳しい)。

 

さて本題に戻ろう。この小ドイツ主義と大ドイツ主義にならい、13人の765プロを求める動きを小765主義、ミリオン世界の765プロを求める動きを大765主義としたい。ここで、留意して欲しいのは、ドイツ統一の経緯や結果よりも、主義の内容である。

小765主義者にとってみれば、13人の765の展開と52人の展開は明らかに区別するべきものであり、13人の展開の独立性というものこそが最も大事である。また、13人の展開とミリオンの展開の境目を曖昧にすることは、次第に元々の13人の性質が侵食されるのではという懸念を持つ。

一方の大765主義者は(13人の展開の独立性は認める者も多いだろうが)、ミリオンの展開の中において13人と39人が不可分であると捉える。そのため、13人のアイドルにその世界線の中で一定の重要な役割を果たすことを求め、時には「765PRO ALLSTARS」として活躍することを期待する。

ここで、摩擦が生じる。ミリオンの世界において、「765PRO ALLSTARS」が活躍することで得られた13人の性質が、13人だけの展開に持ち込まれないだろうか。持ち込まれた場合、それは小765主義者にとって受け容れ可能なものだろうか。また、「765PRO ALLSTARS」という概念に与える影響はどんなものか。

これを考える上での好例が、LEADER!!という曲だろう。この曲は、旧来からの13人のアイドルが歌う歌であり、クレジットは「765PRO ALLSTARS」である。そして、この曲において、タイトル"LEADER"という単語に込められた意味が重要だろう。「先導する者」「率いる者」「先に立つ者」という訳や、あるいは「旗手」という訳も可能かもしれない。誰を率いるのかと考えれば、後輩の39人が思い浮かぶ。ミリオン(ミリシタ )の展開において、13人は先輩であり、その属性が強調された曲であると理解するのが自然だろう。先輩たる彼女たちの決意を感じとることのできる曲ではないか。各々の楽しみ方がある曲だろう。

ここで少し翻って、クレジットが「765PRO ALLSTARS」であることに改めて注目したい。これは大きな問題点を孕んでいる。たしかに、13人が歌っている。ミリオンの世界においても、13人が「765PRO ALLSTARS」として活動するのは自然なことだろう。しかし、先述したような「先輩」の属性を持つこの52人の765プロにおける「765PRO ALLSTARS」と、13人だけの展開における「765PRO ALLSTARS」は明らかに性質が異なったものとなる。13人だけの展開においては当然彼女たちは先輩ではない。しかし、両者とも「765PRO ALLSTARS」なのである。

小765主義者が望むこととして、13人だけの展開の彼女たちに、そういう属性が持ち込まれないことをあげた。これは、あくまで世界観が異なるのであり、その峻別をして欲しいということを意味する。

この峻別を難しくしているのが、両方のクレジットが「765PRO ALLSTARS」であることだ。両者は別物であるにも関わらず、同じ名前を冠する。その結果、この両者の境界は次第に曖昧なものとなり、境界線が融解していく。そして、13人だけの世界観に52人の世界観の性質が持ち込まれる余地が生まれる。新しくこのコンテンツに触れる者にとっては、一見その違いが分かりにくくなっている点も指摘できる。これもやはり、長期的な境界の融解を招くと言えよう。

コンテンツの提供者たる公式・運営さえもが、この境界をかなり曖昧に捉えていることが現れた例がある。バンナムフェス2日目における、765プロオールスターズの選曲だ。765プロオールスターズの3曲目に歌われたのは、LEADER!!であった。これは小765主義者には衝撃であろう。この日のクレジットは「765プロオールスターズ」であり、「765ミリオンスターズ」は別のアーティストとして参加していたからだ。この分け方をしている以上、ミリオンの世界観の中での曲であるLEADER!!を「765プロオールスターズ」に歌わせることは、明らかに世界観の理解を誤っている。これはあくまで声優ライブではあるが、公式・運営の姿勢として、この両者の峻別をはっきりと行なっていないことが現れた一例と言えよう。

小765主義の視点から、批判にも近い論を繰り広げてきたが、ミリオンの展開における13人の活動を「765PRO ALLSTARS」と表記するのは当然のことであろう。後輩が入ってくるまでの間も、彼女達は「765PRO ALLSTARS」として活動してきたであろうし、後輩が入ってきたからと言ってそれが変わるわけではない。

ただ、繰り返しになるが、小765主義者にとって、後輩が入ってきた世界における「765PRO ALLSTARS」と13人だけの世界における「765PRO ALLSTARS」はやはり別物なのである。こう望むのは少数者かもしれないが、それでも少なからぬ数ではないだろうか。その意味でも「765PRO ALLSTARS」というクレジットに対する扱いは慎重であって欲しいし、あるべきだと考える。

コンテンツの始祖たる765プロソフトパワーをより維持していくためにも、そうした細やかなところを丁寧に扱っていく姿勢が求められるように思う。

 

バンナムフェスでLEADER!!が歌われた曲順を誤っておりました。申し訳ございません。現在は訂正しております。