春香Pの雑記

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「誠実さ」こそが外交のカギ?外交と民主主義の関係はどうあるべき?-読書感想『外交』H・ニコルソン

 

外交 (UP選書)

外交 (UP選書)

 

 

この本を読み、外交のイメージが変わった。やはり外交のイメージとしてマキァヴェリ的な権謀術数、狡知さを駆使した駆け引きという面が今でもあるだろうという印象を持っていた。しかしニコルソンは、外交官に求められる重要な資質の一つが誠実であり、策謀を巡らせるような外交が結局は成功しないという。誠実な交渉によって他国との信頼や信用を構築することが結局は自国にとってプラスに働くのだ、という考えは自分にとって外交に明るいイメージを与えるものだった。

 ニコルソンはイギリスの外交官はその性質を備えているが故に、世界で最も成功する外交官であるという評価を与えている。たしかに、国家間関係の処理という外交の膨大なケースのなかでとらえるのであればそれは適当なのかもしれない。その一方で、やはり思い浮かべるのは中東、イスラエルパレスチナの問題である。この問題はイギリスの三枚舌外交が惹き起こした悲劇だといえるだろう。逆に言えば、この問題は誠実・正直に基づかない外交が失敗しうるというニコルソンの主張に説得力を増すケースでもあるかもしれないなどと感じた。

 民主的外交に関する記述もまた、大変興味深かった。貴族外交や会議外交の枠組みだけで外交がなしえた時代と異なり、現代はやはり国民による外交への興味、民主的統制が求められる時代である。日韓関係などは、国民の感情がお互いの関係を難しくしている好例だろう。ニコルソンが提起した「民主的外交の形態が今後いかに進化していくべきか」という問題は未だ我々のうえにのしかかっている。教育による変革国民の意識の変革が必要であるように思われる。自分の経験を振り返ってみれば、初等中等教育の段階で、自国と他国の関係を見つめるという機会は非常に少なかった。教育基本法第2条は、(日本の)伝統と文化の尊重や我が国と強度を愛する態度と同列に、他国を尊重し、国際社会の平和と発展に寄与する態度を育成することを目標としている。もう少しこの目標達成のために充てられる授業がなされてもよいのではないだろうか、と考えるきっかけとなった。