春香Pの雑記

アイマスのこと、書評、日記など。

イスラームとは、そして原理主義とは。イスラームの歴史からアイドルマスターを考えてみる。 ー読書感想『イスラームの歴史』カレン・アームストロング

 

 非常に面白い一冊だった。高校で世界史を学んだ際、幸運にもイスラームに理解ある先生に教わったためにイスラーム文化の面白さというものを漠然と感じていたが、今回はより深くイスラームの特徴に触れ、魅力を感じることが出来た。また、普段自分がなかなか意識することのない「宗教」について考える良い機会を提供してくれたし、イスラームから見た歴史の視座で西洋社会を捉えなおすのも大変興味深い試みだと感じた。

 イスラームという宗教が成立当初から深く政治と関わり合い、また社会の変容に対応して形を変えていく様は一冊を通して印象的だ。ウンマの趨勢は人々がクルアーンに適合して生活できているかどうかを反映する、という考えはわかりやすく人々に訴えやすいものだろう。その時のイスラーム社会の状況によって、イスラームの教義が常に見直されてきた歴史は私にとって面白く、加えてその教義一つ一つが興味深い。

スーフィズムとよばれるイスラーム神秘主義の1エピソードが紹介されている。あるスーフィストが内的な経験に神を見いだし、アッラーに「我は汝を通して存在する。汝のほかに神はない」と告げられたというエピソードだ。クルアーンハディースに従って生活を送ることでアッラーを自らに内在させ、自らが神と一体化とするという宗教的姿勢は、信者の生活に充実感を与えるとともに、優秀な社会規範として機能するだろうことは想像に難くない。ストア派的にも見えるこの解釈は魅力的だし、イスラームが本来持つ懐の深さを示しているように思う。

特定の宗教を信じていない私にとって、これを羨ましく思う感情が少なからず存在することを再発見できた。多少プラグマティックな形ではあるが、自らを律する規範として何か一本寄りかかれる軸をあえて設定してみるのもいいかなと思わせるくらいには、イスラームは魅力的な面がある(現に、天海春香を規範にしている節は否めないのだが)。

また、似ているが少し違う流派として、ツイッターのTLで、自分と天海春香と一体化させようとする、言ってみれば天海春香神秘主義みたいな感じの方を見かけたり見かけなかったり…

www.hi-ho-meditations.com

 

 著者の宗教の変遷に対する視点も新鮮であった。「宗教は決して変化しないものと思われているが、実際には変化しており、かつ時代を後戻りすることは出来ない。改革はその意図にかかわらず、たとえ保守的なものでも新たな展開であって、現在の問題に信仰を適用させようとする試みである」というこの指摘には、なるほどと思わされた。原理主義を捉える際に非常に役に立つだろう。また、それぞれのアイマスPの選好を考える際にも。同じコンテンツに接していても、それぞれが全く違うものとしてアイマスを捉えているのではないか。

 

 現在における一部の原理主義者、過激派がイスラームに対するイメージを損なっていることを率直に残念に思う。今後、西側諸国とイスラーム文化の相互理解が健全な形で進展していくことを願ってやまない。